NPO法人 富山の名水を守る会



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富山県には、「全国名水百選」(環境省により選定)に選ばれた名水が、なんと8カ所もあります。これは、熊本県と並び全国1位の数です。

“水の王国”とも称される富山県にあるNPO法人「富山の名水を守る会」は、長年にわたり名水の研究を重ねてきた理事長・岡岸喜義さんが率いる団体です。どんな活動をしているのでしょうか。岡岸さんにお話を伺いました。

理事長の岡岸喜義さん

 

 

—「富山の名水を守る会」は、NPO法人として活動を始めてから今年(平成29年)で12年目を迎えるのですね。そもそも、発足したきっかけを教えてください。

 

20年以上前、友人に勧められ南砺市の「脇谷の水」を訪れて飲んだところ、「こんなにうまい水があるのか」と驚きました。それをきっかけに水に興味を持ち、県内の名水スポットを訪ね歩きました。水にまつわる本を読んだり、水の研究を趣味として楽しんでいました。

平成10年には、水の大切さを多くの人に知ってもらいたいとの思いから、「富山県民生涯学習カレッジ 自遊塾」の県民教授として、「富山の名水探訪」という講座を開講。3年目には、その塾生との親睦会である「おかめ会」(岡岸の「おか」と名水の「め」)も誕生し、自遊塾での講座に加え、おかめ会での名水探訪バスツアーや、懇親会などのイベントも楽しんできました。

8年目にさしかかった頃、“ここまで続いてきたのだから、この分野で何か社会貢献がしたい”との思いが強くなり、平成17年にNPO法人「富山の名水を守る会」を発足しました。これまでのおかめ会メンバーに加えて新たに会員を募り、名水探訪を楽しみながら環境保全活動をするという活動をスタートさせました。

 

 

—趣味が高じて、現在のような活動へと発展したのですね。具体的に、どんなことをしていらっしゃるのですか。

 

富山県内にある名水スポット50数カ所を会員らとともに探訪し、簡易水質検査、水汲み場やその周辺の清掃を行なっています。毎回、中型バスを貸し切って数カ所をまわります。岐阜や新潟など、県外の名水を訪れることもあります。

この活動を通じて仲良くなって、楽しいコミュニティになっています。

名水探訪の中でも特徴のある活動は、富山市の「いたち川」沿いの湧き水6カ所を、清掃ウォーキングしながら水質検査をするという取り組み。平成18年から毎年行なっています。

水汲み場が汚れたり劣化していないか、成分や味に変化はないか、安心・安全な水であるかどうかなど、広く愛飲者のみなさんに知らせていきたいと思っています。

 

富山市にある「いたち川」沿いの湧水6箇所の簡易水質検査

 

いたち川沿いの清掃活動

 

 

—名水探訪を楽しみながら、名水を守るためのボランティア活動も行なうというのは素晴らしいですね。水質検査では、問題が見つかることもありますか?

 

はい、思いがけない事に出くわすこともありました。

参拝客も多く訪れるある寺の参道の湧き水を試飲してみたところ、ものすごく不味くて不審に思い、水質検査をしました。検査の結果、飲み水として不適切であることがわかり、行政の担当者も「この水は融雪用の井戸水。まさか参拝客が飲用しているとは知らなかった」と。その経緯は当時ニュースになり、発見者としてテレビや新聞にも取り上げられました。

また、ある湧き水の水汲み場には、事実とは違う表記がされた大きな看板が掲げられていました。これでは愛飲者に間違った情報を与えてしまうと思い、表現の誤りを正していただくよう管理者に促しました。名水ならぬ“迷水”が、たまにあるので、定期的に水質検査をしていきたいですね。

 

 

「富山の名水を守る会」の活動はこれまで多くの新聞や冊子に取り上げられている

 

 

—楽しむだけでなく、改善を促す活動もなさっているのですね。社会に向けての取り組みは、ほかにもあるのですか?

 

「自遊塾」の講座以外にも、地域のコミュニティセンターから名水をテーマにした生涯学習講座を依頼されたり、イベントでの展示発表や講演も行なっています。そのおかげで地域の方々との新たな出会いや、交流の機会が得られるのが嬉しいですね。

行政の担当者や名水の管理者などが集まって意見交換する「とやまの名水ネットワーク協議会」にも、毎年利用者代表として参加しています。この分野で、少しでも多く社会に貢献できればと思います。

それから、地元のラジオ局「エフエムいみず」で、毎週月曜に「富山の名水紹介」という番組にも出演しています。実は平成19年の開局以来、毎週出演させていただいているので、出演回数は500回を数えました。

自遊塾は今年(平成29年)で20年目、ラジオの出演は11年目となります。

 

 

ショッピングセンター「イオンモールとなみ」での展示イベント・利き水クイズの様子

 

 

「エイジレスとやまエキスポ2014」では富山大学での展示発表や活動紹介を行なった

 

 

—大活躍ですね!名水を通じて、地域に喜ばれるたくさんの活動をされているのですね。ちなみに、会員のみなさんはどのような方々なのですか?

 

地元の主婦の方や、政治家や学校の先生、いろいろな方が参加していますよ。会員数は、現在(平成29年度)69名で、半分以上は「自遊塾」の修了生ですが、テレビや雑誌に取り上げていただいたのを見て入会される方もいらっしゃいます。なかには、東京から参加している方もおられますよ。

皆さん、回を重ねるごとに仲良くなっています。趣味の付き合いというのは、仲が深まりやすいのでしょうね。

平成24年には、「富山県エイジレス社会活動推進協議会」から顕彰状を受賞しました。名水探訪は、心身ともに健康になれるということで、高齢化対策にも良いと思います。

ぜひこれからも多くの方々に楽しんでいただきたいですね。

 

 

—ありがとうございます。最後に、射水市を始めとした地域の皆さんに伝えたいことはありますか?

 

 

射水市には「誕生寺(たんじょうじ)の誕生水」という名水があります。約600年前に法華宗を開いた日隆聖人(にちりゅうしょうにん)が誕生した時、清泉が湧き出したのが始まりといわれています。とても美味しいですよ。ぜひもっと多くの方々に知っていただき、観光名所になればいいなと思います。

同じ富山県内の名水でもそれぞれに違いがあり、知っていくと面白いですよ。ぜひ「名水探訪」に参加して、心身ともに豊かな人生を送りましょう。

 

 


岡岸さんと話していると、興味と探究心を持ち、楽しんで活動されているのが伝わります。趣味として楽しんでいたことを社会貢献へと繋げてしまう、そのポジティブなパワーに驚かされます。岡岸さんのような活動があってこそ、今日のおいしい水が守られているのかもしれませんね。


 

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