NPO法人「子どもの権利支援センターぱれっと」(以下ぱれっと)は、いじめや不登校などで、学校に行きづらい子どものための居場所「ほっとスマイル」を運営しています。子どもたちの相談に乗ったり、保護者への支援を行ったりしています。理事長の明橋大二(あけはしだいじ)さんにお話を聞いてきました。
—「ぱれっと」では子どもの居場所づくりが活動内容の軸になっているのですね。もともとはどのような経緯で活動を始められたのでしょうか。
私が精神科医ということもあり、最初は病院の中に学校へ行きづらい子どもたちの居場所を作ろうとしました。でも、病院にいるからには診断やカルテが必要になります。病院にはなかなか不登校の子どもたちは集まりませんでした。なぜなら、不登校は病気ではないからです。やはり地域に子どもの居場所を作らなければと思うようになりました。当時、県東部には子どもの居場所となる施設がありましたが、西部には相談ができる窓口があるだけで、実際の拠点はありませんでした。そのため、有志数名で新しい場所を作れないかと協議を重ねていました。
当時はちょうど小杉町(現射水市)が子どもの権利条例づくりを進めていた頃で、施策の一つとして子どもの居場所が作れないかという話もあがっていました。私自身、策定委員の一人として携わっていたこともあり、メンバーと共に、町長や教育長と話合いを重ね、実現したのが、今の子どもたちの居場所「ほっとスマイル」です。この場所の運営のためにNPO法人「ぱれっと」が設立されました。ちなみに子どもの権利条例に基づく公設民営の子どもの居場所は、全国2例目で、先駆けた存在でした。
—NPO団体の名前になっている「ぱれっと」にはどのような思いが込められているんですか?
「いろんな個性(色)が集まって、新しい交流(色)が生まれる。どの色も大切な存在」という意味です。
—普段はどのように過ごしていますか?
みんなでゲームやトランプをしたりする子もいれば、一人で漫画を読んだりパソコンをしたりしている子もいます。疲れたら休めるスペースもあります。子どもたちに自由に使ってほしい場所なので、特にルールはありません。お昼にみんなでランチを作ることもあります。普段はのんびりとした時間が流れていますが、イベントの時期には、みんな活発に動きますよ。作品づくりや開所記念パーティなど毎月のようにイベントがありますから、日々の刺激にもなります。
—いじめや不登校はとてもデリケートな問題ですが、「ほっとスマイル」では具体的にどのような支援をしていますか?
まず、家から一歩を踏み出せない子どもはたくさんいます。保護者から相談を受けることもありますが、無理に来させるのはやめてくださいと伝えています。子どもが自分から来たいと自然に思えるまで、待つことが大切だと思っています。また、小・中学生の場合は、学校に行けなくなると、同時に友達も失ってしまうことが多いです。「ほっとスマイル」のような、学校以外にも、安心して友達と出会える場所があることを知ってほしいですね。
「ほっとスマイル」は土曜日も開けています。普段は学校に通っているけれど、実は悩みがある子どももいますからね。対象は18歳以下、小学生未満から高校生まで通っています。常勤の男性スタッフが、子どもたちと一緒に遊んだり、相談に乗ったりしています。子どもと同じ目線で接することが彼の魅力で、子どもたちからも慕われています。
—学校だけが社会ではないということを、子どもに知ってもらうのは大切なことですね。居場所づくり以外にも何か活動はされていらっしゃいますか?
悩んでいるのは子どもだけではなく保護者も一緒。一人で抱え込む前に相談してほしいと「家族支援事業えくぼ」を始めました。この事業は富山県からの委託事業で、一度は虐待で離れてしまった親子を、親の気持ちに寄り添いつつ、親子間のコミュニケーションの手助けをしながら、家族の再統合をめざすものです。虐待は本当に難しい問題ですが、児童相談所と密に連携を取りながら、市民目線を生かして関わっています。
また、ネットでの相談掲示板も設けています。富山大学工学部の教員と開発した電子掲示板で、子どもと保護者両方からの相談を受けています。「青少年相談掲示板」と「親専用掲示板」に分かれていて、毎日のように相談があります。これまでに二つ合わせて2万件以上の投稿がありますね。独自のシステムにより、誹謗中傷など不適切な書き込みは一切ありません。顔が見えないからこそ、話せることもたくさんあるんです。
他にも、小学1年生とその保護者に向けた野外活動や子育て談義、子育てについての講演や学習会を行っています。
—子どもへのサポートだけでなく保護者へのサポートにも力を入れてらっしゃるんですね。今後も何か新たな活動を考えていますか?
新しい取り組みよりも今の活動をより深く浸透させることが大切だと思っています。なぜなら、不登校をとりまく環境はこの10年、それほど変わったとは思えないからです。月日は流れているのに、問題は以前のままという状況を、どこかで打開しなければなりません。
—子どもや保護者、そして市民の皆さんへメッセージをお願いします。
まず、子どもたちに伝えたいのは、学校や家でつらいことがあったら、「ほっとスマイル」を訪れてほしいということ。ある子どもが以前「自分を元気にしてくれたのは、カウンセラーでも医者でもなかった。友達だった。」と話してくれました。ここは、安心して友達と出会える居場所なんです。
また、「ほっとスマイル」は駅前の商店街にあるので、地域の大人たちが見守ってくれています。保護者の方も、子どもたちを安心して送り出してほしいし、悩んだ時はウェブでもメールでもいいので、気軽に相談してほしいです。
子どもたちだけでなく保護者にも寄り添う「ぱれっと」。講座の受講者やたくさんの子どもたちと、その周辺の問題と向き合ってきた明橋さんの言葉は、ひとつひとつ優しく心に響きます。この話し方がスタッフにも受け継がれているからこそ、あたたかい居場所ができているのだと思います。
学校と家が社会の全てとなりがちな子どもたちにとって、第三の場所はとても大切です。もし居場所がない、生きづらいと感じているなら、「ほっとスマイル」への第一歩から、外へ出る勇気と自信を持ってくれたらと思います。
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