NPO法人 放生津



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富山型デイサービス「イヤサー新湊」と、お弁当やお惣菜を販売している「おかず屋 味幸」を運営している、NPO法人「放生津」。
法人名や施設に地名を入れるほど、地域への愛情がいっぱいの団体です。
60代や70代の方々が元気に働く「放生津」。
「毎日忙しいけれど、楽しいわ!」と笑う「放生津」理事長の林みゆきさんにお話をうかがいました。

 

—平成24年設立ということで、比較的新しい団体なんですね。

 

「イヤサー新湊」と「おかず屋 味幸」が入っているマンション「リアン放生津」の建築に合わせてできた団体です。

きっかけは平成15年、とある新聞で放生津地区が日本で10番目に住みにくい町だと紹介されたことでした。当時は人2人がやっと通れるような細い路地が多くて、町家が続いているので火事が起きるとすぐに延焼するし、何かあっても救急車が通れないと言われていました。言われたままではいられない!と市役所職員や放生津地区の自治会長らが集まって月に一度、勉強会を始めたのが「放生津」の原点です。私も当時民生委員として参加していました。その後、放生津の実情について陳情書を提出したところ見事通り、東京の防災まちづくり会社の人たちが区画整理を進めるために派遣されてきました。

アドバイスをもらいながら話し合いは進み、マンションを作って市営住宅にしようという結論になりました。マンションができる前に住んでいた方たちは、そのままマンションに住んだり、別の場所に移ったりしましたが、やはり高齢化が進んでいる地域ということで、1階にデイサービスを設ける提案が出ました。そこでなぜか白羽の矢が立ったのが私だったんです(笑)。

 

 

新湊曳山まつりのカレンダーをパラパラめくり、「いいわぁ〜」とつぶやく林さん。新湊の方はお祭り好きの人が多いんだそう

 

 

—福祉のお仕事をされていたわけではなかったんですか?

 

「おかず屋 味幸」は、2005年ごろから近所で開いていましたが、福祉系の仕事はしたことも知識も全くなくて。ただ民生委員は20年以上勤めていましたから、デイサービスに挑戦しようと思ったんです。でも初心者は初心者ですから、富山型デイサービスの生みの親、NPO法人「このゆびとーまれ」の惣万さんに相談しました。「周りの人が資格持っとればいいが!」と言われたので、少し気が楽になりましたね。実際、ケアマネージャーや看護師などは各自治会長さんが自分の地区から探してくれました。長く介護施設で働いていた方から、偶然転職したばかりのヘルパーさんまで、タイミングが良かったんです。

 

「おかず屋 味幸」は大きなガラスの入ったドアが目印

 

「イヤサー新湊」はイメージカラーでもある青色の文字が目印

 

 

—ということは、このマンションは「イヤサー新湊」と「おかず屋 味幸」が入ることを前提に設計されてるんですね。

 

そうなんです。元々私のお店だった「おかず屋 味幸」は、今も近所の奥様たちの憩いの場になっていますし、「イヤサー新湊」ですごす方たちの昼食も作っています。「イヤサー新湊」は利用者さんが大勢いるわけではないので、栄養管理まではしていませんが、気配りはとことんしています。夜ご飯が必要だという人には、あらかじめお弁当を作ったり、歯が弱い人には白米をおかゆにしたり、利用者さんの希望はなるべく叶えようと、ご飯を作っています。

 

 

—林さんの限りない愛が感じられます。でも、毎日お忙しいんじゃないですか?

 

朝はお弁当の仕込みから始まるので、6時半には厨房に入ります。夕方には利用者さんが帰られるので、夜は比較的ゆっくりできますね。毎日いろんなことが起きるので忙しいですが、楽しいですし充実しています。

 

 

—その笑顔から楽しさが伝わってきます。食だけでなく、デイサービスにも気配りや思いやりがあふれていそうですね。

 

デイサービスなので、基本はお風呂に入るのが一番の目的です。お風呂で垢すりをすることもありますよ。送迎後に気になって、もう一度顔を見に行く時もあります。本当は宿泊もできる施設にしようと話が出ていたんですが、やはり人員不足からどうしても難しくて…。今も、週末だけ泊まりたいという利用者さんがいますが、別の施設をご紹介しています。少しでも利用者さんの期待に応えたいという思いから、もう一歩踏み込んだサービスを心がけています。そこまでしなくても…と周りに言われることもありますが、利用者さんが喜んでくれる姿を見ると“これが正しい”と思えますね。

ちょうど取材日は月に1度のお誕生日会。常連の方が多いからこそできるイベント

—設立から5年経ちますが、心境の変化などはありましたか?

 

やっと一息つくことができたかなと思っています。最初の1年は右も左も分からないまま走っていましたが、今は少し余裕が出てきたので、立ち位置や周囲を見れるようになってきたかなと思います。そうはいっても、やはり毎日目まぐるしいので、改めてゆっくり振り返る暇はありませんね。これからも利用者さんやお客さんを大切にする「放生津」でありたいと思っています。

 
—利用者さんへの思いが一言一言に詰まっていますね。今抱えている課題などはありますか?

 

若い人が少ないという点が、この先不安ではあります。でも、高齢者の話し相手は高齢者が一番いいと思うんです。「放生津」のスタッフは、平均年齢は60歳を優に超えていますし、70代のスタッフも私を含めてバリバリ働いています。もちろん若いスタッフがいてくれると助かる部分も大きいですが、今はまだそこまで深刻ではないかもしれませんね(笑)。

—市民の皆さんへメッセージをお願いします。

 

「イヤサー新湊」はおかげさまで毎日多くの利用者さんに来ていただいています。「おかず屋 味幸」も近所の皆さんに支えられて、毎日楽しく営業できています。本当にありがたいことです。これからも利用者さんやお客さんに笑顔になっていただけるよう、努めていきたいです。


 

利用者さんやお客さんへ惜しみないサービスと愛情を贈るパワフルな林さんを見ていると、高齢者とは何をもって高齢者というのか改めて考えさせられました。
高齢化が進む今の世の中で、これからの日本の地域を盛り上げるのは今の「放生津」を支えている”高齢者”と呼ばれる方々の底力かもしれません。

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