NPO法人 むげん



Pocket

 

 

障害者へのサポートを行うNPO法人「むげん」。高齢化が進んだ現在、福祉の捉え方が拡大されるとともに、「むげん」もサポートの対象の幅を広げてきました。障害があっても、年齢を重ねても、楽しく暮らしていける地域にしたいと話す代表・門田晋(かどたすすむ)さん。「むげん」の設立経緯や活動内容をご紹介いただきます。

 

 


 

—事務所では相談支援や就労継続支援も行なっているんですね。障害者や高齢者へのサービスを中心に活動されていますが、団体を設立された背景を教えてください。

 

私は40年以上ソーシャルワーカーとして働いてきました。大学で初めて福祉について学びましたが、貧困や差別も福祉の問題の一部と知り、世界で起こっている福祉の現状にカルチャーショックを受けました。それと同時に、“福祉に関する職種について、貢献したい”と使命感も生まれました。当時はソーシャルワーカーの国家資格もなく、肩書きもあまり知られていませんでしたが、それでも県内に数名は公的施設に配属されていました。私は富山市内の民間病院に就職しました。ソーシャルワーカーが民間病院に勤務することは当時珍しく、新聞が取材に来るほどでしたよ。病院では、ソーシャルワーカーとして医療費問題や就労等社会復帰に関する多くの相談を受け、本人や家族の方々を支援してきました。定年後、余裕が出てきたころにふと射水市内の福祉の現状を見ると、障害者へのサポート体制が整っていないことに愕然としました。県内でも格差があるのだと改めて知りました。

その後、交友のあったソーシャルワーカーを4人と話し合い、障害者のための相談支援事業所を開きました。この時は私の自宅や電話での対応のほか、相談者の自宅に伺い相談事業にあたりました。よく相談されたのは、障害者の働く場所を教えてほしい、つくってほしいという願いでした。その思いをどうにか叶えたいと、2011年にNPO団体「むげん」を設立しました。小さな団体で、ソーシャルワーカーの資格を持っている人が5人もいるところは、他にはあまりないと思います。

今は相談支援事業所のほかに、就労継続支援事業所の顔も持っています。毎日15名ほどの利用者さんが通っています。

 

 

—就労継続支援事業所は、主に障害者の方が通われているんですか?

 

精神障害者や知的障害者のほかに、引きこもりで家から出られなくなった方も通われています。毎日通うのが難しい方は、週に数回という場合もあります。仕事内容は、内職作業の委託を受けたものが主です。細かな作業が多いのですが、1つずつ丁寧に行うのを評価していただけているようで、今は作業内容も多岐に渡ってきました。利用者さんそれぞれに得意な仕事があり、同じ作業の積み重ねで成長が見られると、私たちスタッフもとても嬉しいですね。

居場所づくりや仲間づくりの場所として、「むげん」を活用してほしいと思っているので、利用者さん同士が一緒にご飯を食べたり、休憩時間に遊んでいたりする姿を見るのも嬉しいものです。施設外での社会科見学や食事会で、それまでに見たことがないほどの笑顔を浮かべていた時は、何とも言い表せない気持ちになりました。

 

 

チューリップの苗を育てて出荷している。一つ一つメッセージが添えられており、毎年すぐに売り切れてしまう人気商品

 

 

—仲間ができると通うのも楽しくなって、また明日も来たいと思いますよね。

 

毎日安定して通えるようになると、次のステップに進みます。「むげん」に通うことがゴールではなく、一般の会社に通うことでまた新たなスタートラインなのだと思っています。

実際、一般の会社に勤めるのは容易ではなく、受け入れをお願いしても、いい返事をいただけることは少ないです。それならまず私たちが、障害者も社会で活躍できることを知ってもらえるように、支援しようと考えています。外部との打ち合わせや会議に利用者さんが「むげん」の代表として出席することも考えています。私たちの方が利用者さんより年齢を重ねていますから、どうしても先に衰えてしまいます。今後サポートできる範囲を考えても、今から様々な経験を積んでほしいと思っています。先方の方々にも、利用者さんの顔や名前を知って、声を聞いてもらい、交流を持ってほしいと思います。

 

 

納涼祭の様子。地域の方々も多く訪れる

 

 

—では地域との交流も活発に行われていますか?

 

はい。地域交流行事は毎月のように行っていて、中でも納涼祭とクリスマス感謝祭はたくさんの人がいらっしゃいます。納涼祭は他の市町村にある就労支援事業所の方々がお店を出してくれたり、盆踊りを楽しんだりと夜まで賑やかな1日になります。市役所の職員や近隣自治会住民の方々もいらっしゃいます。

また毎月第3金曜日には「健康づくり教室」といって、理学療法士とプロのジャズダンサーという2つの顔を持つ方が、各自に合った体操を教えてくれます。体調や体の都合にあわせて考えてくれるので、自分だけのオリジナル体操です。

このような告知は近隣3自治体にチラシでお知らせしていますが、もっと多くの人に来てほしいと思っています。利用者さんと近所の皆さんの接する機会がさらに増えれば、障害の理解が深まり、地域で共に生きるネットワークを強められると思います。

 

 

「クリスマス感謝祭」の様子

 

 

—地域との関わりが増えると、相乗効果が生まれそうですね。これからの取り組みは何か考えていらっしゃいますか?

 

実は今、建物の一部をコミュニティー喫茶にしようと改装中です。利用者さんがお茶やお菓子を運んで、お客さんに配膳する。これだけでも大切なふれあいの時間なんです。また、このあたりは、3世帯同居でも日中みんな学校や会社に行って一人だけという高齢者の方もいらっしゃいます。コミュニティー喫茶「よってかれ間(仮称)」がオープンした際には、ぜひ足を運んでほしいですね。何か手伝ってほしい、してほしいという気持ちよりも、顔を出してくれるだけでいいのですから。

 
 

ここにあれを置いて…ここはあれを置いて…とコミュニティー喫茶の内装イメージを説明してくださった

 
 
—では最後に市民の皆さんへメッセージをお願いします。

 

病気や障害などの不安を抱え、悩んでおられる障害者や高齢者の方、そのご家族の方は、一度ご連絡いただければと思います。当事者の目線に立ち、「住み慣れた地域で当たり前に暮らす」をテーマに、これからの生活の提案・サポートをいたします。今は悩みがない方も、ぜひ遊びにきてほしいですね。新しい人とのふれあいは利用者さんにとって、とても刺激になります。顔を出したり声をかけてくれたりするその一つ一つが、私たちにはとてもありがたいです。コミュニティー喫茶で、地域の皆さんや利用者さんの声が飛び交う光景が、今から待ち遠しいです。

 

 


 

障害者へのサポートからスタートした「むげん」。これからは、福祉のある新しい街づくりと地域住民の健康づくりや、ご近所の交流などのサポートもしていきたいと話す門田さん。市や県という単位ではなく、小さな地域から丁寧に支援していくことから、変えていけることがあると考えていらっしゃいます。「定年を迎えてからの方が忙しいかもしれん」と話す表情は、どこか嬉しそうにも見えました。

近々の活動

この団体への連絡

この団体のサービスや活動を依頼したい方はこちらのフォームからご連絡ください。