NPO法人 水辺のまち新湊



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その景観の美しさから“日本のベニス”と称され、観光客や移住者も増えている射水市新湊地区・内川エリア。

川のカーブに沿って連なる町並みの一角に「水辺のまち新湊」はあります。

現在、専務理事を務める二口紀代人さんに、お話を伺いました。

 

 

専務理事の二口紀代人さん

 

 

—地域の活性化や景観保全など、多岐にわたる活動を行なっておられますね。映画やドラマなどのロケーション撮影の支援もされているということなのですが。

 

 

行政や各種機関と協力し、地元・内川周辺でのロケーション撮影の支援を行なっています。制作サイドから「こんな場所での撮影がしたい」という要望を伺い、家主と交渉したり、エキストラを用意したり、相談から撮影時のお手伝いまで、できる限りのサポートをしています。

地元に密着したまちづくり団体として、「地元の活性化に繋がることは何でもやる」がモットー。とにかく楽しんでやっています。

 

 

—そもそも、この団体はどうしてできたのですか?

 

2002年に、新湊商工会議所(現・射水商工会議所)で新湊TMO構想(※1)が策定されました。その実践部隊をつくろうと、商工会議所の有志が集まったのがきっかけです。

 

当時副会頭だった故・荒木輝夫さんが遺した直筆資料には、立ち上げに対する熱い想いが綴られている。

 

 

当時、新湊地区は、大きな転換期を迎えていました。新湊大橋の建設や北陸新幹線開業に向けた準備など、インフラ整備がどんどん進められる一方で、人口は減っていきます。商工会議所メンバーの間で“過疎化が進む新湊地区を何とかしたい”という思いが、ちらほらと語られるようになってきました。

あるとき「観光客を呼び込み、中心市街地を活性化をするためには、全市民上げて取り組まねばならない。そのためには、行政、企業、各種団体、そして市民全員が協力連携していくことが必要不可欠だ。行政と民間の共同による第3セクターが中心となって、まちづくりを進めていくべきではないか」との声があがります。

それをきっかけに、2005年、商工会議所の有志が団結し、まちづくり・福祉の充実等を定款に盛り込んだNPO法人「水辺のまち新湊」が発足しました。

 

 

—(資料を見せていただきながら)“新湊を盛り上げたい!”という、当時の熱さが伝わってきますね。

 

新湊地区は港町ということもあって、もともと血気盛んな人たちが多いんです。だから“みんなで何かをやろう”という雰囲気になると、一気に盛り上がる、そんな地域性があるんですよ。

 

 

—発足後は、どんな活動をしていらっしゃるのですか?

 

2006年に、市より「新湊勤労青少年ホーム」の指定管理の委託を受けました。(指定管理は2012年に終了)まずはそこに活動の事務局を置くとともに、地域住民の交流サロンとなるようにしました。毎週日曜の「子ども向け映写会」や、川辺での「夕涼み会」など、地域に賑わいを創出するためのさまざまなイベントを開催しました。

現在は、射水市の「内川景観グランドデザイン事業(※2)」に基づいて、「内川まち歩きワークショップ」、「内川まちづくり大会議」などの、まちのあり方や魅力を再考・再発見するような企画に力を入れています。

企画の中で参加者から出たアイデアに、「かぶす会議」があります。郷土料理である“かぶす汁”を参加者で作って、食べながら内川のまちづくりについて意見交換をするというイベントです。その開催に向けて、現在は準備奮闘中です。

 

2011年から始まった、夜の内川を光で彩る「十楽の市」

 

 

2016年11月の「内川まちづくり大会議」では、参加者70名で内川のまちづくりへの意見交換を行った

 

 

—イベントで出たアイデアが次の企画へと繋がっているのですね。それから、空き家を利用した「移住交流施設」の運営もなさっているようですが?

 

「射水市移住交流促進事業」の一環で、空き家の紹介や移住者の受け入れ、マッチングを行っています。現在、内川周辺には3軒の移住交流施設がありますが、この施設を利用されて、実際に10世帯以上が移住してきているんですよ。映画のロケ地として全国に名が知られたこともあり、ここ数年は全国各地から「移住交流施設で生活を体験してみたい」とのオファーが来ています。

 

 

2015年に構えた現在の事務所も、空き家を再利用したもの。会議室として使用しているのは、かつて座敷だった場所

 

 

—ところで、二口さんがここで働き始めたのはいつですか?

 

2010年、市役所を定年退職した後です。定年までさまざまな部署の仕事を担当してきましたが、特に「まちづくり」の仕事にやりがいと面白さを感じてきました。定年後、いくつかの団体からお声がかかりましたが、迷わず「水辺のまち新湊」への再就職を決めました。ここは待遇も他と比べると良くはなかったけれど、それでもこの仕事がしたい、と思ってね(笑)

 

 

—よほど“まちづくり”の仕事がお好きなんですね。

 

元々、お祭り好きなんですよ。地元で毎年行なわれる「曳山まつり」や「獅子舞」は、子どもの頃から一番の楽しみだった。だからイベントを企画するのも準備するのもとにかく、楽しいんです。

「水辺のまち新湊」では、市民ボランティアの方やスタッフが、自分の好きなことや得意分野を発展させてイベントの企画から実施までを担当するため、面白いつながりや広がりを生んでいます。

 

 

—そうなんですか。自分で好きな企画ができるというのは興味深いですね。

 

たとえば「懐かしの映画ポスターコレクション」(2017年1月5日〜3月21日開催)は、ある方からの持ち込み企画から始まりました。

ある日の夕暮れのこと、見知らぬ男性が事務所を訪ねてきました。話を聞くと、自宅に数十年コレクションしてきた映画のポスターが、なんと千数百枚もあって、それらを何か活かせないかということでした。映画のロケ地として注目されつつある内川にぴったりの材料じゃないか!と、すぐに私が飛びつきました。

ちょうど、ロケでも使われた板壁の建物をリノベーションして「番屋カフェ」がオープンしたばかりの頃でした。「番屋カフェ」の2階は、誰でも無料で入れるギャラリースペースになっていたので、そこを利用すれば、ポスターをたくさんの人に見てもらうことができます。

近くのレンタル着物店ともコラボレーションしたらもっと楽しいイベントになりそうだぞ…と、あれよあれよと企画ができ、トントン拍子に準備が進み、開催に至りました。

 

 

「懐かしの映画ポスターコレクション」の様子

 

 

—何気ない話から、このようなイベントになるとは。市民が企画を持ち込み、スタッフの皆さんや地域の人々と一緒に作り上げていく…。皆、楽しんで携わっていらっしゃるのが伝わります。大変なことや、苦労はないのですか?

 

もちろんあります。私たちのイベントに、若い人がなかなか参加してくれないことです。地域の外から来てくれる若い人たちもですが、地元の若者にももっと私たちの活動に参加してもらいたいと切に願っています。現在のように高齢者ばかりでは、アイデアも体力もそのうち限界が来てしまう。地元の自治会や青年会にもお願いしていますが、なかなか…。イベントのたびに、試行錯誤しています。

また、資金不足の問題も大きいです。行政や地域の人々に私たちの活動の必要性を正しく知ってもらい、今この活動を通じてまちづくりを進めることがどれだけ緊急性の高い重要なことかということを、理解してもらう必要があると思っています。

 

 

—最後に、市民の方に向けたメッセージをお願いします。

 

 

地元の人はもちろん、新湊地区以外の方からの持ち込み企画やイベントなども大歓迎です。この地を一緒に盛り上げてくださるなら、どなたからでも歓迎します。こんなイベントをやりたい、こんな企画を考えてみましたなど、小さなアイデアからでもどしどしお待ちしております!

 

 


 

取材途中にもご近所さんがふらりと入ってきて、まちの人々が気軽に訪れる憩いの場になっている「水辺のまち新湊」の事務所。さまざまな課題を抱えて悩みながらも、地元を心底愛し、楽しんで活動している人のもとには、笑顔や前向きなアイデアが引き寄せられるのだと感じました。

 


 

 

 

※1 TMO(Town Management Organization)構想

TMOとは、行政や民間などさまざまな立場の人々が参加する、まちのマネージメント(運営)を総合的に企画・調整する役割をもった、まちづくり機関。時には事業主体となり、中心市街地の諸資源を活かした活性化を図る。

TMO構想とは、TMOの基本方針や行う事業などについてまとめた「計画書」のようなもの。ここでは、旧新湊市の中心市街地活性化を図ることを目的としたもの。

 

 

※2 内川景観グランドデザイン事業

射水市が2015年に策定した「新湊内川周辺地域まちづくり計画」の中にある事業のひとつ。内川の美しい景観を維持し、その魅力を生かすための整備、空き地の活用、ワークショップ等のイベントを実施するという内容。

 

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