動物や植物の生息地を形成・保持している「NPO法人自然環境ネットワーク・射水市ビオトープ協会」(以下ビオトープ協会)。「環境で地域を元気にする。射水丘陵の生物多様性を考える」をモットーに、モリアオガエルやホクリクサンショウウオなどが生息する射水丘陵の原風景を残そうと活動されています。代表の岡田さんをはじめとした生き物好きなメンバーの皆さんに、お話を伺いました。
—ビオトープの意味を調べたら「野生動植物の安定した生息地」と出てきました。ビオトープ協会では野生の生き物や植物の住む場所を作ったり、守ったりしているんですね?
そうです。温暖化や森林伐採の影響で、数十年前は川や田んぼでよく見かけた生き物や植物がどんどんなくなっています。田んぼや池が少なくなっているのも、生き物がいなくなっている原因のひとつでしょう。生き物も植物も過ごしやすい環境にしようと、現在は棚田を生かして池を作ったり、鳥の巣箱を作ったりしています。
—池を新しく作るとは大変ですね…。そもそもビオトープ協会を立ち上げるきっかけは何だったのでしょうか?
元々は小杉高校の生物クラブのOBが中心となって設立された団体です。私たちが生物クラブに所属していた1963年当時は部員60人以上という大所帯で、水生昆虫の研究や蝶、キノコの研究などを行っていました。きれいな川にしか生息しない生き物、反対に汚い川にしか生息しない生き物を調査することで、川の汚染度を調べた研究は、県展示会で最優秀賞をいただいたほど。当時はかなり活発に活動していました。
その後当時顧問をされていた櫛岡先生が、小杉高校に校長として赴任されたことなどを機に、生物クラブのOB会として「あゆみの会」が発足しました。活動も水生昆虫の研究を主に行っていたので、まるで学生時代に戻ったかのようでしたね。その後、有志が集い、活動内容や調査対象を水生昆虫だけでなく、自然全体に広げ、任意団体「射水市ビオトープ協会」を結成しました。
さらに、より社会に貢献できる団体にしようと、2013年4月16日にNPO法人設立を申請しました。ちなみに今も櫛岡先生にはビオトープ協会の顧問として、よく指導いただいていますよ。
—学生時代の先輩後輩が今また同じ場所で集えているのは、サークル活動みたいで楽しそうです。今でも生物クラブOBの方が中心ですか?
任意団体を結成したあたりからは、生物クラブOBや小杉高校OBの枠を取り払い、自然保護に関心のある人が参加してくれています。特にメンバー募集の告知はしていませんが、生き物が好きな人や、仕事がひと段落して何か活動する場所を求めている人が自然と集まってきますね。子どもの頃に戻って土や草とふれあいたいという人から、生き物に興味がないという人まで、さまざまです。
—普段の活動もやはり里山の保護や維持を中心にされているのでしょうか?
環境の保全が私たちの活動目的の核ですから、里山ビオトープの形成・活用事業が中心です。
侵入竹や外来植物を伐採して地域在来種の広葉樹を植林したり、ホタルやトンボ、サンショウウオの産卵地を確保するために、年中水を蓄える池や水路を造成したりしています。
えさや産卵地、水質など様々な条件がそろわないと、生き物が住みやすい池とはいえません。私たちが作った池に、新しい生き物が来ているかどうか、近くにどんな野生動物がいるかは頻繁に足を運んで調べています。昔は田んぼによくいたオタマジャクシも、今ではほとんど見られなくなりました。しかし里山の池は環境が整っているようで、今でもカエルの卵が産みつけられていますよ。
カブトムシは近年、幼虫がイノシシに食べられるなどして、数が少なくなってきました。そこで、枕木と金網で食害を防ぐカブトムシ繁殖施設をつくりました。おかげで、近くの林に生息していたカブトムシが産卵し、千匹以上の幼虫が繁殖しています。ちなみにカブトムシの幼虫はビオトープ協会主催のイベントなどで無料で配っていますよ。
—今ではカブトムシが売られている時代ですよね。昔と今とでは環境はガラリと変わってしまったんでしょうか。
確実に緑は減っていますし、生き物が暮らしにくい環境になってきたことは事実だと思います。昔より数は減ってしまったけれど、今残っている生態系をしっかり保全していくのが私たちの使命だと思っています。里山が多い射水市だからこそ、そこで生きられる生き物の数も多いのです。
—セミナーやイベントなども開かれているんですか?
一般の方向けの自然環境セミナーや、市内の小学生と一緒に里山で生き物とふれあう活動もしています。生き物といっても鮭の放流や鳥の巣箱づくりなど活動は幅広いです。以前、市内の小学校と姉妹校ということで、東京都渋谷区の小学生が来てくれました。東京ど真ん中で暮らす子供たちと記念植樹や生き物観察を行いましたが、林や池の一つ一つにとても驚き、喜んでくれましたね。
子供が生き物とふれあう場所は、昔はたくさんありました。ですから、そういう場所が少なくなった今は、里山を体感してもらうこと自体が、大切な人生経験のひとつだと思っています。すぐそばに生えている竹を切って材料として活用することは、昔は当たり前でしたが、実はとてもありがたいことなのだと、今の子供たちから教えてもらっています。
—里山の自然も当たり前ではないですよね。これからやりたいことなどはありますか?
たくさんありますね(笑)。今までビオトープ池や周りの林で見かけなかった新しい生き物に訪れてほしいのはもちろん、今は少ない生き物たちをどう維持・保存していくかも重要です。この場所にしか生息しない生き物もいるので、たくさん見られるように環境を整えたいとも思っています。池を作るにも機械を入れて、設備を組んで…と時間もお金も労力もかかるので、大変ですが、少しずつ生き物が戻ってきたり増えてきたりすると嬉しいし、俄然やる気が湧きます。
—最後に市民の皆さんへメッセージはありますか?
近年は映画などで射水市の海や川、曳山の魅力が発信されていますが、市内には魅力的な里山もあるということを知ってもらいたいです。自分の住んでいる地域の新たな一面を知るいいきっかけにもなると思います。生き物が好きな方はもちろん、何か夢中になれるものが欲しいという方も大歓迎です。様々な切り口からビオトープを考えるので、あなたが興味を持つポイントがきっとあると思います。
生き物好きが集い始まったビオトープ協会。今では植物や環境の知識を持った人も増えて、より大きな視野で里山のことを考え、活動する団体へと発展しています。住んでいる人も意外と知らない魅力がたくさん詰まった里山に、あなたも足を踏み入れてみませんか。
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