「マージャン」と聞いて何が頭に浮かびますか?漢字や絵が描かれた牌、四角い卓を囲む人々、ジャラジャラと混ぜ合わせる音などの他に、もしかしたら賭けごとや、ダーティな雰囲気を思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれません。今回取材した「健康麻将越中ひばり会」が行うのは”麻雀”ではなく「健康麻将」(※1)。一般的なマージャンとの違いや、団体の実態について、代表の川上浩志さんにご紹介いただきます。
—「健康麻将」って聞き慣れない言葉ですが、いわゆる”麻雀”との違いはなんですか?
基本的なルールはほぼ一緒ですが、打つ時のマナーもきっちり決められている点が大きな違いです。マージャンのイメージによくある「賭け」や「お酒」、「タバコ」は一切禁止で、「賭けない」「飲まない」「吸わない」がモットー。「学ぶ」「遊ぶ」「競う」ことを大切にしています。実は、ねんりんピック(全国健康福祉祭)の正式種目にも入ってます。
—ねんりんピックの種目に採用されるほどとは知りませんでした。ちなみにねんりんピックの他の種目には囲碁や将棋もありますが、なぜ「健康麻将」を?
脳と手を働かせる点ではどの競技も一緒ですが、「健康麻将」は牌がジャラジャラと動く音もあって賑やかに遊べます。同じ盤を囲んだ方たちと会話を楽しむことで、脳のトレーニングにもなるし、実は認知症予防にもつながるんですよ。ですから、年に数回行われる大会では、競技前に病院の先生を呼んで認知症のセミナーを開いたり、プロのオーケストラ奏者を呼んで演奏を聴いたりもしています。高齢者の方が多いので、詐欺抑制の講座や演劇を見ることもあります。一石二鳥ならぬ三鳥、四鳥を目指しています(笑)
—マージャンをベースにして、別の分野にもつながっていくとは。一つのコミュニケーションツールとして成り立っていますね。そもそも川上さんがマージャンと出会ったのはいつですか?
11歳の時です。兄が友達とマージャンをしているのを後ろで見ていたら、自然と覚えてしまいました。自分の方がうまくできる!と思っていました。年を重ねてからは、普段マージャンをすることはありませんでしたが、ある日仕事で訪れた横浜の街を歩いていたら、たまたま「健康麻将」という看板が目に入って。聞いたことがない言葉で引き寄せられたのと、会場がビジネスホテルだったこと、そして主催しているNPO法人の名前にはマージャンの「ま」の字もなかったので、看板を見ただけで興味がぐんと湧きました。会場を覗くと、高齢者の方々が楽しそうにマージャンをしていました。”健康”と”麻雀”はイメージ的に正反対だと思っていたので、それはもう衝撃でしたね。
楽しく暮らしたい、遊びたいと思う方々が集まってマージャンをする文化は当時富山にはありませんでした。しかし、「健康麻将」がねんりんピックの種目に採用されていること、そして2018年には富山県でねんりんピックが開かれることを知り、今から富山で普及させたら、結構広がるのではと思いました。それが「健康麻将越中ひばり会」を始めたきっかけです。
—たまたま出会ったものを、すぐに取り入れるとはすごい行動力ですね。不安などはありませんでしたか?
元々富山で抱かれている”麻雀”のイメージから考えると、マイナスからのスタートです。そう思うと、不安よりも、とにかく時間がもったいなかったので、行動を起こそう!動こう!と思いましたね。賭けごとにもなる麻雀に比べて、「健康麻将」は始まりが65年後です。その間についたイメージは根強いはずなので、マイナスに思われるのは仕方ないこと。でも「健康麻将」を知ってもらえたら、魅力に感じてもらえる自信があります。
—先についてしまったイメージを払拭させるって大変だと思います。そのためにもまずは知ってもらうことを念頭に置いてらっしゃるんですね。セミナーや演劇の話も先ほど出ましたが、「健康麻将」を知ってもらうために他にも何か活動されてますか?
医療系セミナーや音楽コンサートから「健康麻将」を知ってもらう切り口を大事にしています。また、活動する場所にもこだわっていますね。市内のコミュニティセンターや公民館などの公共施設を主な活動場所にしているので、近所の方が目にする可能性が高くなります。平日の昼間なのに、ここみたいに何十人も集まっている場所はあまりないと思いますよ。現在は会員の3割が女性。おしゃべりしながら楽しめる点を魅力に感じて来てくれるのかもしれません。
全国から参加者が集まる大会を、五箇山の「合掌造り」や城端の「善徳寺」の中で開催したこともあります。世界遺産や国宝の中でマージャンができるので、皆さん本当に喜んでくれますね。
—県外だけでなく、県内の方も「ここでマージャンができるとは!」と思いながら打てるので嬉しいでしょうね。県外からの参加者に、そして県内在住の会員にも喜んでもらいたいという川上さんの思いが伝わります。ちなみに今も新しいアイデアが頭の中にあるんですか?
今後は他世代や他分野とのつながりを深めたいです。例えば、市内の小学生を呼んで、ゲームや会話で会員とふれあいの時間を設けられないかなと。孫と同世代の小学生が来てくれると元気になるし、小学生にとっても認知症の知識や、予防方法を学ぶ絶好の場所になると思います。
また、絵合わせゲームなどの簡単なものであれば、障害者の方々にも楽しんでもらえます。市内には障害者への支援を行なっているNPO団体がいくつかあるので、連携を取っていつか一緒に活動ができたら嬉しいですね。
“マージャンにあまりいいイメージを持っていない方も、僕に数十分いただければ「健康麻将」のファンにする自信がある”と話していた川上さん。全身から伝わるエネルギーをひしひしと感じました。川上さんの熱い思いが今後富山のマージャンのイメージを変える日もそう遠くないのかもしれません。
※1 健康麻将
中国では麻将と表記します。日本に伝わった際、先に「マージャン」という言葉だけ伝わったので、後から「将」と同じ発音である「雀」の字が当てられました。
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