NPO法人 アポロン



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明治15年ごろに建てられたという敷地面積500坪弱の古民家。
この場所を拠点に美術工芸や音楽、生活文化などのイベントを通して交流を行っているのが「自遊人倶楽部」です。
この運営を行っているNPO法人「アポロン」理事長の野入潤(のいりじゅん)さんと、事務局長の豊子(とよこ)さんご夫妻に、団体の活動内容や古民家への思いについてお伺いしました。

 

 

代表の野入潤さん。自身も絵画や陶芸など様々な創造活動をしている

 

 

—立派なお家ですね。どのような経緯で「アポロン」が管理することになったんでしょうか?

 

もともと田中さんという方のお宅でした。家があまりに大きく、管理も行き届かないので、この先どうしようか迷われている当主の娘さんと偶然知り合ったのがきっかけです。市に寄付を申し出ても断られてしまい、取り壊しも考えられたそうです。それならば、誰かに活用してほしいと思っておられた矢先でした。

家を見せていただき、一目でここを気に入ってしまった私たちが立候補しました。ただ、個人ではなく、団体に管理してほしいという娘さんのご意向がありました。それならこの家を文化的な交流のための活動拠点にしようと思い、NPO法人をつくる動きが始まりました。

昭和10年代に大きく改修が行われており、当時の建築技術が結集されています。代々の当主が「勘兵衛」と名乗っていたことから、「勘兵衛はうす」と名付けました。

 

 

事務局長の豊子さん。「勘兵衛はうす」への思いを熱く語っていただいた

 

 

—当時の技術が結集された家とはどのような部分で分かるのですか?

 

以前、専門家の方に建物を見ていただいた際に、様々な場所に当時最先端だった技術や伝統技術が使われていると教えていただきました。
大きさからも分かるように、地元の有力者だった当主が、技術の粋を集めて建てられたもので、現代の職人技術では再現不可能とも言われる建物です。建設当時出始めの頃でとても高価だったコンクリートが、土塀の土台に使用されています。内装も、長さ約9メートルの縁側に継ぎ目のない1本の木材が使われていたり、お風呂の天井にも欄間があったりと細かいところも凝った造りになっています。私たちも数年通っていますが、まだ気づいていないところもきっとあると思います。

また、現在は国の登録文化財に申請中です。もし登録されたら、その魅力をさらに伝えていきたいと考えています。

 

 

継ぎ目なしの1本の木材で建築された梁

 

 

お風呂の天井にある欄間には富士山が

 

 

—今はどのような活動をされていらっしゃいますか?

 

「アポロン」の活動は「勘兵衛はうす」の保存・維持と、地域交流活動を行う「自遊人倶楽部」の2つが柱です。催しの内容も、「勘兵衛はうす」の趣きに合うテーマが多いです。会員の方々が集まってものづくりをしたり、食事やお茶をいただいて親睦を深めたりしています。以前に、イタリアンのシェフに目の前で調理していただき、ランチを楽しんだこともありました。

時には、会員以外の方々も楽しめるイベントもあります。先日、ひなまつりの会を行った時は、それぞれにお雛様を持ち寄って、琴や尺八の演奏を聴いたり、お花やお抹茶を楽しんだりしました。楽器を演奏するのも、お花を生けるのも会員の皆さんです。人前で何かをするのはちょっと恥ずかしいかもしれませんが、自分の得意なこと・熱中していることを披露していただけることを期待しています。

もちろん、一般の方向けの講座を行うこともあります。川柳の勉強会や、リース作り、お豆腐作りなど、会員の得意なことをみんなで楽しむイベントを中心に行っています。

 
 

—活動にどんどん広がりが出てきているんですね。主力の2事業以外にも何かあるのでしょうか。

 

月に2回、陶芸好きの方が集まる「陶芸同好会」も運営しています。土蔵の近くに窯があるので、互いに教えあいながら自由に創作しています。初心者にも、経験者が丁寧に教えてくださるので安心です。

また、年に一度「アポロン文化祭」と言って、会員のみなさんや講師の方々の作品を展示・販売しています。告知はあまりしていないのですが、口コミで多くの人が足を運んでくれています。

 

 

陶芸同好会の方々の作品。特にテーマはなく、自由に作品を作っている

 

 

—この家も、人が過ごしたり出入りしたりすることで、生き生きしているようですね。部屋ごとに1日から長期まで貸し出しもしているということですが、今まではどのような方が借りられたんでしょうか。

 

ガラス作家の方がアトリエとして借りられたり、富山大学でフリーペーパーを制作しているサークルが撮影場所として借りられたりと用途は様々ですね。以前はガラス作家を目指していらっしゃる方が2階に住んでいたこともありました。もちろん、お風呂もキッチンも使えますよ。

 

 

「勘兵衛はうす」の細かいところまで丁寧に説明してくださった

 

 

—ご近所の方もよくいらっしゃるんでしょうか?

 

何かイベントをしていると、お菓子を差し入れてくださったりして、とてもありがたいです。私たちは富山市民で、この地域に昔から住んでいたわけではありません。また、建物が立派なので、ご近所の皆さんからは敷居が高くて入れないという声もききます。でも最近は顔を出してくださる方が少しずつ増えているので、嬉しいです。そうやって、少しずつ距離を縮めていけたらいいなと思いますね。
 
 

—やはり、多くの方に「勘兵衛はうす」の存在を知ってもらうことが、これからの課題にもなりますか?

 

そうですね。PRの方法もブログや掲示板のみですから、もう少し広げられたら…とは思います。口コミでも徐々に広がっているので、確実に会員は増えているのですが、経営的に厳しい時もあるので、もっと多くの人に知ってもらい、利用してほしいですね。古民家ですから直したい箇所はあるのですが、今はお金をかけない方法でしか対応できません。今後もこの「勘兵衛はうす」を続けていくために、向き合わないといけない課題だと思います。
 

 
—最後に市民の皆さんへメッセージをお願いします。

 

「自遊人倶楽部」「陶芸同好会」ともに、興味のある方はぜひ一度参加してみてください。いつでも連絡お待ちしております。また、「勘兵衛はうす」を見学したいという方も大歓迎です。案内もしますので、少しでも興味を持たれる方を増やしていければと思います。

 

 


 

縁もゆかりもなかった古民家に惹かれて、団体を立ち上げた野入さん。撮影の時も「ここから撮ると、こういう具合に屋根が映り込んでね…」と教えてくださいました。まさに「勘兵衛はうす」に深い愛着があり、家を知り尽くした方です。

至るところに建築当時の職人の技術が詰まり、野入さん夫妻が維持・保存のために心を砕く「勘兵衛はうす」で、憩いのひと時を過ごしてみてはいかがでしょうか。

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